①ピソ探しと契約までの流れ
普通、スペイン人の学生や留学生が利用するのはピソ・コンパルティード piso compartido といって、要するにピソを数人でシェアするやり方です。ピソ・コンパルティードは、たいてい、誰かがすでに借りて住んでいるピソの空いている部屋に入るか、大家さんとの直接の契約でピソの空いている部屋に入るかのどちらかのパターンです。どちらの場合もピソ・コンパルティードはあくまでコンパルティード(共有タイプ)ですから、寝室は各自の個室ですが(探せばツインもあります)、キッチン、バス、トイレ、サロンなどは同居人との共有になります。
もちろん仲間さえ集まれば自分達でピソを借りることも出来ます。別に不動産屋さんを通してでなくてもピソの持ち主がピソを丸ごとを借りることも出来ますから、いい物件が見つかればそれもいいかもしれません。が、お気軽で、それでいて無難なのはやはりピソ・コンパルティードです。
ピソの空き部屋は、売買広告専門の新聞冊子や、語学学校や大学の掲示板、あるいはスーパーマーケットやバルの伝言板などで探すことが出来ます。また、公衆電話に入居者募集の張り紙がしておることもあります。普通、その手の掲示板には連絡先が書いてありますから、住所や主な条件を見て良さそうであれば連絡して実際に部屋を見せてもらいます。自分が借りる部屋やピソ全体の間取りだけでなく、家賃、設備、同居人となる住人の面々、そしてピソの周りの環境など、気に入れば契約です。
まぁ、契約といっても、普通は口約束です。大家さんとの直接の契約であっても、たいていは「気に入ったからココに住みます」「ハイ、どうぞ」で終わり。ただし、敷金(depositoデポシト)として何がしかを払うように言われるかもしれません。私の場合は、最初の1ヵ月は2か月分の家賃を払わねばなりませんでしたが、この余分の1ヵ月分の家賃は最後の1ヵ月に適用されることになっていました(ただし1ヵ月で出ていく場合は戻ってきません)。また、人物証明としてパスポートのコピーを渡すようにも言われました。家賃支払いの領収書はもらえませんでした。
ホームステイと同様に、ピソの手配をしてくれる語学学校もあります。学校で手配してもらうと、学校が所有しているピソあるいは学校が契約しているピソの一部屋を借りることになる場合もあれば、学校の紹介で一般のピソに入ることになる場合もあります。
学校で手配してもらうと、例えば領収書ももらえるでしょうし(学校の紹介で一般のピソに入る場合は大家さんに直接払うので領収書がないこともあるようです)、万が一のときのトラブル処理をやってもらえる(または手伝ってもらえる)という利点もあるでしょう。が、学校が所有しているピソあるいは学校が契約しているピソの一部屋を借りる場合、同居人は同じ学校の生徒ばかりで変わり映えしませんし、スペイン人と住むという可能性は皆無に近くなってしますでしょう。
また、予め日本から申し込んで学校に手配してもらうと、どんな部屋なのか、同居人はどんな人たちなのかといったことは「行ってからのお楽しみ」になります。運良くいい部屋や同居人に恵まれればラッキーですが、ホームステイの場合と同様、必ずしも上手くいくとは限りませんので、よく考えることが必要です。
②ピソ選びのポイント
ピソ選びでのポイントには以下のようなものが揚げられます。よかったら参考にして下さい。
場所 |
学校や、自分のよく行くエリアから遠くないかどうか。留学生にはアシがないので自分の行動や活動に便利な場所がいい。 |
ピソの周りの環境 |
スーパーマーケットなど買い物の出来るところやバス停などが近いかどうか。また治安のよいエリアかどうかなど。 |
ピソ全体の設備 |
その物件が何階か。エレベーターの数や郵便受けの作り。またエントランスや階段の雰囲気など。また、セントラル・ヒーティングかどうか。 |
家全体の間取り |
部屋数と各部屋の間取り。道路に面したピソだとうるさいこともある。 |
家の中の設備 |
洗濯機、TV、電話等の有無。電話は受信用だけでもあると便利。住人の数や男女比に対してのバス・トイレの数、サロンの広さ、また、大家の同居など。 |
自分の寝室の間取りと設備 |
部屋の広さ。向き(パティオ向きは風通しが悪い、外向きは環境によるが道路に面しているとうるさいかも)。ベッド、机、ワードローブは基本。あとは枕、毛布等寝具の有無、電気スタンドや本棚の有無など。また、ドアが鍵付きかどうか。 |
家賃と諸経費の支払い方法 |
住環境を含めたピソ全体及び家の設備や自分の部屋そのものの状態と家賃が釣り合うかどうか。電気、水道、ガス等、諸経費の計算方法などよく訊いて納得できるかどうか。 |
同居人のタイプ及び人数 |
どんな人が同居人になるのか、全部で何人か。男女別ナシのピソかどうか、喫煙等に関する考え方など。 |
③ピソ暮らしの始まり
さあ、いよいよピソでの暮らしが始まります。
ピソ・コンパルティードでは他人同士が一緒に生活するわけですから、それなりのルールが必要になります。大家さんが一緒に住むような場合は、当然大家さんの決めたルールに従わざるを得ませんが(そういう場合は口うるさくいわれて結構大変なこともあるとか)、そうでない場合でも、すでにそのピソに住んでいる人たちの間にはある程度のルールがありますから、それをまず知ることからそこでの生活は始まります。
といっても、さして難しいことではありません。物の置き場所とか、冷蔵庫の中の棚が自分の場所かとか、掃除の当番、喫煙に関するルールや、そういった諸々のことです。最初にきちんと知っておかないと後々トラブルにもなりかねませんので、納得できないことがあったら最初の段階でちゃんと話し合っておいたほうがいいでしょう。また、わがままはいけませんが、自分の側からの何か要求があったらそれも予め伝えてみんなの合意を得ておくことも大切です。
よく聞くのは、スペイン人を始め欧米人の多くは物事全般において大雑把でルーズなため、掃除当番なんてものを決めてもそれをまともに遂行しないので家が散らかり放題になるとか、共有の場に置いてある私有物を勝手に使われるといったことが起こりがちということです。特にこれはキッチンでのことが多いようです。つまり、使った食器や鍋類を片付けない、また、人の食糧を勝手に使うといったことです。後者は、場合いよってはお互いに黙認していて持ちつ持たれつであったり、調味料など基本的なものだけ共有したりといったこともあるようですが、今夜食べようと思っていたものがいざ食べようとしたら無かったり、それを「自分のがなくなっちゃったからもらっちゃったぁ~」で済まされたりすることもあるようなので、納得が出来ないようなら一応きちんと話し合ったりしたほうがいいかもしれません。
実際にある程度の期間が過ぎてみなければ同居人がそれぞれどんな人なのかということは分かりませんが、どんなに「いい人」であっても、ひとつの家に一緒に住んでいれば嫌なところが見えることもあれば、それぞれの都合で上手くいかないこともあります。でも基本的にはお互い様なので、それを承知の上で生活することがピソ・コンパルティードでの暮らしということになります。
もちろん同居人と仲良くなれれば、みんなで夕食を作りあったり、時にはフィエスタ(パーティ)をしたりと楽しく過ごせます。どんなピソにどんな人と住むかという半分運みたいなものもありますが、自分のやり方次第で楽しくもなれば、トラブルの原因になったりもします。いずれにせよ、それぞれ独立した存在なのですから、何事も自己責任で楽しいピソ暮らしをしたいものです。